「日韓関係のゆくえ」
先の国連総会で日韓首脳が2年9ヵ月ぶりに対面で意見交換を行った。ロシアのウクライナ侵略、北朝鮮による異例のミサイル連続発射、中国の脅威など、安全保障上の懸念が増すなか、日米韓の連携が今ほど求められる時期はない。日韓関係は李明博政権時代に悪化し、文在寅政権下の積弊清算と歴史修正で史上最悪となった。尹錫悦は大統領選中から北朝鮮、中国への懸念、米韓同盟の重要性を表明していた保守とリアリズムの政治家で、戦後、金大中政権以来の日韓関係に熱意を持って取り組む政権。日韓関係を正常化する最後のチャンスだ。
国同士の協力関係が成り立つには脅威の認識が共有できることが条件だが、北朝鮮を脅威と認識していない文在寅政権下では所詮日韓関係の改善は不可能であった。
安倍外交の最大の成果は自由で開かれたインド太平洋戦略であり、歴史問題で不当な要求に屈しないことにあった。徴用工問題で日本企業の財産の現金化を先送りする間に解決策は検討できる。
わが国の外交安全保障の最大優先事項は台湾有事の抑止であり、そのためには中国と建設的・安定的な関係を維持することが不可欠だが、日中国交正常化50周年の節目にあたる現在、日中関係は芳しくない。ロシアによるウクライナ侵略でロシアがより危険な存在となり、日本の周辺国で、米国の同盟国で自由な民主主義国家は韓国のみ。
中国、ロシアという大国に挟まれた半島国家の宿命として韓国は時の政権で方針ががらりと変わる。現在、日韓関係は経済安全保障の観点からも、半導体で日本が設計し、韓国が設計するなど競合というより補完的関係が増えており、尹錫悦政権下で韓国を味方にし、日韓関係の改善に取り組むべきことが日本の国益につながる。
日本がなすべきことは、反撃能力、サイバーインテリジェンス対策も含めた防衛力の強化と、首脳・閣僚級会合を通じた対中韓との意思疎通を強化することだ。来るAPECはまたとない機会となるだろう。